徹夜して書きました。こんな長文レポを書くのは最初で最後だと思います。拙い文章ではございますが、少しでもお役に立てればと、思い出せる限り詳細に書いてみます。「行けないならせめて、行った人の話だけでもいいから聞きたい」という気持ちになることは私もよくあるので。こんなレポートでも無いよりはいいかと。あまりに長い観劇記録のため、便宜上、敬称略で書いている箇所がございます。御了承ください。あらすじだけ知りたい人は前半を読み飛ばしてください。
では、いくぜっ!
東京サンシャインボーイズ「returns」
作・演出:三谷幸喜
出演:相島一之 阿南健治 伊藤俊人 小原雅人 梶原善 甲本雅裕 小林隆 近藤芳正 斉藤清子 谷川清美(演劇集団円) 西田薫 西村雅彦 野仲イサオ 宮地雅子 吉田羊(声の出演:山寺宏一 戸田恵子)
21:30開演 上演時間80分 3500円
最終公演「罠」に参加した俳優は客演も含め全員参加。「蜉蝣峠」本番中の梶原善は映像で参加。伊藤俊人は声で参加。初期メンバーの深沢敦と松重豊も参加したら巌は更に喜ぶが(笑)それはいくらなんでも強欲すぎ。今回は「罠」のメンバーで、ということにしたそうだ。
客席の年齢層はやや高め。(30代~40代くらいが最多、もっと上の世代の方もいらした)私が一番若造くらいかもしれない。標準より男性が多め(男性35%、女性65%くらい)やはり皆さん苦労してチケットを手に入れた方が多いようで、席に座っているとあちらこちらからチケット獲得の武勇伝が耳に入ってくる。倍率は50倍だったそうな(と聞こえてきた)
チケット申込の際、希望日と座席を選ぶようになっていた。「指定席」か「ベンチシート」か。てっきり、指定席っていうのは見やすいきちんとした席で、ベンチシートっていうのは通路に臨時で設けた端っこの補助席か最後列のことだろうと思っていた。当選したのはベンチ希望で出した日。で、行ってみたら
ベンチシート=最前2列(というより、最前列の座席と舞台の間の空間に、さらに無理やり2列ねじこんだ感じ)
膝の高さくらいしかない舞台までの距離50センチ。
近い。
近い席のことを「かぶりつき」と例えることがあるが、これはそれ以上に近・・・・「抱きつき」の席・・・いやホント、ハグしたくらいの満足感。顔はもちろん、服の布地まではっきり見える。表情シワや白髪まで(そんなとこ見なさんな。)
そんな間近で役者さんをガン見。セクハラで訴えられても弁解できないくらいガン見。だってこの距離でこの人たちが揃ってる芝居を観ることなんてもう一生ないだろうから。
眼前で西村が相島が小林が甲本が阿南が野仲が近藤が小原が
おおおおおー。10本分の芝居を一度に見たくらいの濃さ。
どういう演技するのか、どういう技術なのか、どういう方法なのか、できるだけ吸収して帰りたかったので、じーっと見ていた。
メインのセリフをしゃべってる俳優の後ろで、ほかの人がどんな動きをしているか、とか。スライドを見ている場面では観客の目線がスライドに行っているので、その時、ほかの俳優はどんな表情をしているか、とか。声の出し方とか。体の向きとか。(どっち向くかって地味に難しくないですか?)
プロだからと言われればそれまでだが、こんなに近くでじっと見られてるのにそっちに注意を取られず集中力が切れないのは流石。
充電期間に入ってから15年が経ち、彼らの年齢もだいたい40代後半に差し掛かった。そらみんなそれなりに老けたが、変わっていないと言えば変わっていない。
///さて、ここから、あらすじ。
一人の女性が舞台に現れ、パイプ椅子を舞台に並べていく。椅子の数は12。並べ終わると、がやがやと人が入ってくる。
担任だった柴田村先生から同窓会の案内が届き、小学校の同級生12人が集められた。
しかし当の柴田村先生は来ておらず、代わり彼らを迎えたのはその謎の女性(吉田)。
とりあえず着席し、名前を呼ばれた人から前に出て、軽く自己紹介&近況報告。
並び順は確か
後列左から 西田、小原、野仲、西村、相島、近藤
前列左から 阿南、小林、甲本、斉藤、宮地、谷川
あー違ってたらごめん。前列はよく見えたのだが、後列の野仲小原西村あたりの並びは記憶が怪しい。
相島一之 役者。赤の派手シャツにジーパン。正義の味方・アリマンダー(だったか?)とか言う戦隊モノの役で20年食ってる。少し役者として行き詰った感じの役どころか。
阿南健治 上司と喧嘩して会社をやめたところ
西田薫 主人の和田が都合で来られないので代理で来たという和田夫人。
小原雅人 タクシーの運転手。そのままの制服。
甲本雅裕 ディスカウントショップ「サンチョパンサ」店長。(「HR」で小日向さんがやってたお店の名前と同じ)。冒頭部分で地デジについて熱く語る
小林隆 リストラされて今はマッサージ師。15分150円。安。
近藤芳正 ガラの悪い怪しげな白スーツに首から数珠(?)。日暮里の駅前で日サロ経営(と自己紹介していたが嘘であることが後に明らかに)
斉藤清子 主婦。ワンピースだったと思う。
谷川清美 獣医。患者さん(ダンボールに入ったハムスター)を持参。眼鏡かけてた
西村雅彦 グレーのスリーピース。ホテルで支配人をやっていたがそのホテルがつぶれ、妻の親戚の家の店を手伝っていたがそこもつぶれ、今はスーパーで副店長として働いているがそこも先週火事になり・・・と踏んだり蹴ったり
野仲イサオ リストラに遭い、友人の牧場を手伝っている。ツナギ姿。
宮地雅子 結婚後、離婚。3人の子持ちでファミレスで働く。オレンジのトップスに白のカプリパンツ
自己紹介後、謎の女性が言うには、柴田村先生は実は病気で既に他界したという。
この女性は柴田村先生の娘だった。
「ではわれわれは今日、なんのためにここに集められたのだ?」
「クラスの中でも地味な存在だったわれわれ12人だけが集められた理由は?」
という問いに、柴田村の娘曰く
「3日後に地球は宇宙人に攻撃されます。
父は宇宙科学を研究してそのことにいち早く気づきました。
皆さんは父が選んだ、特殊能力を持つ12人なのです。
みんなで力を合わせて人類を滅亡から救ってください」
「何を言っとんじゃコイツは」と呆気にとられる一同。
客席もポカーン。(甲本さんだけ本気で信じてるのが可笑しい)
SFで来るとはね。おそらくこれ、米ドラマ「ヒーローズ」のパロディです。
ばかばかしい、何を言い出すんだ、帰ろう!と席を立つみんなを甲本を含めた何人かが引き留める。
「そもそも他にも教え子はいっぱいいるのに何で俺たちなわけ?」
「それはあなたたちは1961年という特別な年に生まれているからであり・・・。
1961という数字はひっくり返しても1961。これはとても稀です。
次にこのような現象が起こるのは6009年を待たなければなりません」
「なんだよそれは」
「もしその宇宙人が攻めてくるのが事実だとすれば、まずは警察に行くべきじゃないのか」
「行きました。父は警察に何度も訴えましたが信じてもらえませんでした。ですからみなさんに・・・」
とかくだらないやりとりで揉めていると、実は先生から皆に遺言のビデオテープが届いているという。みんなでそのスライドを見る。
お茶の水博士みたいな髪型の柴田村先生(梶原)。前置きが長く、だらだらしゃべっている。どんな能力を持っているかという話の核心の部分でブチッととぎれるビデオテープ。(急に犬の映像に切り替わるのだがあれはたぶん三谷さん家のわんこ・とびくんだと思う)
こんなビデオでは何も分からない。
ふざけるな!やっぱり帰ろう!という人、多数。
それを引き留める相島。「先生は冗談や世迷言を言うような人間じゃなかった、きっと僕らが選ばれた理由が何かあるはずだ。せっかく何十年ぶりに集まったのだから、ちょっとだけ、みんなで考えてみようよ!」
相島の懸命な説得に、そこまで言うなら・・・としぶしぶ腰を下ろす面々。
で、それぞれどんな特殊能力を持っているのか、小学校のころの記憶を手掛かりに、みんなで考え、一人一人の能力がだんだん明らかになってゆく。そう言えばこんなことがあった、あんなことがあった、と。この能力の当てっこでみんなが一喜一憂するさまが楽しい。
相島一之 くじけない心 バラバラになりそうな集団をつなぎとめる心の優しさ。コンフィダント絆。
阿南健治 空を飛ぶことができる
伊藤俊人 不死身。生命力が強い。
小原雅人 息を長い間止めておくことができる。2分くらい平気。
甲本雅裕 じゃんけんが異常に強い。相島さんと高速じゃんけんし、30連勝。
小林隆 物と話すことができる
近藤芳正 丹下さん(この人だけは役名も覚えている。「罠」のパロディだろう)。タンゲさんだけどチンゲさん。モノマネが得意。レパートリーは田中角栄、フランク永井、森進一など。
斉藤清子 気功術のような力を使い、人間をはねとばすことができる
谷川清美 とびぬけて記憶力がいい
西村雅彦 瞬間移動(テレポーテーション)できる
野仲イサオ 予知夢を見ることができる
宮地雅子 電気に強い。スタンガンあてられてもケロッとしている
早い段階で自分の能力が見つかる者のグループと、いつまで経っても自分の能力が分からず、自分は取り柄がないと悩む者のグループに分かれていく。一番最初に能力が見つかったのは近藤で、そのあと次々とほかの者が続き、最後のほうまで残っていたのが西村・小林・相島。小林の力が分かり、一人抜け、西村相島が残る。終始ふてくされ気味だった西村がガバッと土下座する。
「どうか僕の能力もつきとめてください!」
そして西村の瞬間移動の力が分かり、最後の相島の力も明らかになり。
「よーし、これで全員の能力が分かった!俺達で地球を救うんだ!」「おー!」
と、ここで柴田村の娘がダンボールの中から「これを皆さんに」と「UPT」(宇宙防衛軍)のロゴの入ったキャップを12人に配る。しかし帽子は11個・・・1個足りない。そう言えば父は「ベスト11」を選んだはず、と言う娘。ということは同窓会の案内をもらってない人間がこの中に1人いる?
「そう言えば・・・・この中に1人だけ、宴会芸レベルの力しか持っていないやつがいる・・・」皆の目線は近藤に。
実は近藤の本当の職業は公安の刑事であった。他の11人のクラスメイトなのは嘘ではないが、彼は招待状はもらっていない。先日、宇宙人が攻めてくると言って警察に飛び込んできた変なじいさんの経歴を調べてみると自分の小学校の恩師だった。柴田村先生は精神病院に収容されており、つまり狂っていたのだ。こんなのは茶番だ、すべては頭のおかしい学者とその娘の作り上げた妄想だ!とことの顛末を説明し、「なぜならここは、柴田村先生の研究室じゃない!ここはシアタートップスだ!」と言って舞台頭上の「シアタートップス」のロゴにかけてあった幕をはぐりとる近藤。
その一言で夢から覚める一同。宴は終わったのだ。
なんだ、やっぱり特殊能力なんて自分にはないんだ・・・と。そして彼らは他愛のないいつもの日常に戻り、帰っていく。
泣き崩れる娘に、相島は「大丈夫。大丈夫だよ」と何度も言う。「何が大丈夫なんだよ!」と後から声が飛んでくるが、相島は「なんか・・・なんか分かんないけど、大丈夫な気がするんだ。だから大丈夫。」と励ますような優しい声で娘に言う。
ニヒルな(役柄だった)西村が去り際に「夢は無駄だとは思わない。ほんの一時、夢を見られただけでも幸せだと思うじゃないか。少なくとも俺は・・・・。」と言うのがニクい。きっと三谷さんが本公演で一番言いたかったのはこれだろう。
最後、数人だけが舞台上に残り、ふとしたキッカケから、小林の「動物と話すことができる」という能力だけは本当であったことが明らかになり「えっ・・・・?」
となったところで暗転。終幕。
・・・と思いきや、そのまま「returns」第二部予告へ突入。実は宇宙人が攻めてくるのは本当だった!というアナウンスが流れ、戦隊モノのピカピカの服を着て、キャップをかぶったメンバーが舞台上に次々と現れる。宇宙人と闘うUPT(宇宙防衛軍)の面々。ばかばかしいけどおかしい。宇宙人と戦いながら幕。そのままカーテンコール。
カーテンコールの後、アナウンス。「これより15年間の休憩に入ります」
////以下、俳優について、など。雑感。
お分かりのように、かなり荒唐無稽ででたらめ嘘八百な話でした。
一番最後まで能力が見つけられず、一人取り残されてるのが「相島一之」であるのは、なるほど、三谷が書くのならばきっとそうするであろう、と納得。相島さんに取り柄がないという意味ではなく、キャラクターとして、彼の魅力はあの優しい人柄だと思うので・・・。今回の芝居だって、相島氏が「トップスが閉館になるから何かやろう」と三谷に持ちかけたことがキッカケで皆が集まったのだ。そう、彼はまさに、コンフィダント。
西村さんは、「陰湿なマゾヒスト」「心優しきサディスト」の二つの役柄を得意としている、と三谷氏が評していたことがあるが今回はこのどちらかで言えば後者。ぶすっとしていて気難しいが、意外と乗りやすいとこもあり・・・。西村氏は長身で手足が長く、立ち姿が美しい印象がある。実際、生で見てもやはりスタイルが良くかっこよかった。三つ揃えスーツがよく似合う。彼のエッセイに感銘を受け、手書きで写したことがあった。桑原君(伊藤)と二人でやっていた「今泉」の苦労話や、劇団時代の悩みなど率直な気持ちが書かれていて非常に面白かった。
意外だったのが、相島氏の足の長さ&細さ。足が長いのは良いことなのだが、ずいぶん痩せておられた。風の噂では、昨年少し体調を崩されていたとか。(そんな大病ではないと思います)くれぐれもお体ご自愛いただきたい。
私が好きな役者さんに望むことの一番は「元気でいること」。ファンサービスとか私はいらないので(くれるのならもらうけど←オイ。)とにかく病気にならないで。いつまでも元気でいて。たくさんお仕事して、私に素敵な芝居を見せてください。
その意味では、働き過ぎて頑張り過ぎて死んじまった伊藤俊人には「ばかやろう!」と泣きながら言いたくなってしまう。いくら仕事が大事でも、死んだらいかん。死んだらつまらんよ。(彼は急性くも膜下出血で亡くなったのだが、そもそも強い頭痛がしたのを我慢して仕事を続けていたため病院に行くのが遅れたのだ)
梶原さんは、彼ら生徒たちの恩師役で、スライドで映像出演。彼のスライドが映った瞬間に大きな笑い声が起き、おいしい役でした。ぜひ善さんにもここにいてほしかったが・・・新感線の芝居と重なったのでは致し方ないか。
この芝居のキャストには「伊藤俊人」もきちんとクレジットされている(このあたりにウルッとさせられる)「故」などという文字もつかず、「伊藤俊人」が出るのだ、とはっきり書いてある。どういう形で出ているのかというと、集まった同級生の中には「和田」という人物がおり(「和田」は「君となら」「王様のレストラン」での伊藤の役名)夫が来られないので、私が代理で来ました、という和田夫人(西田薫)。あとから、和田君は1週間前に交通事故で亡くなった旨が皆に伝えられる。和田夫人は、主人は皆さんに会いたがっていた、と骨壺を持参しており
その骨壺に話しかけると、和田(伊藤俊人)の声が返事する、というわけだ。この芝居はコメディなのに、ここだけは私は半泣き。
今回、新たに座組みに加わったのが吉田羊さん。涼しげな美人だ。この短期間の稽古でよくあれだけセリフ入ったなぁという・・・。あれこれ皆に説明しなきゃいけない役なのでトチれないし。いやどの役でもトチっちゃいけないんだけどさ。あの人たちを相手にまとめ役を引き受けるのはプレッシャーもあったろう。
そう言えば今回、セリフを噛んだ人は誰もいなかったようだ。少―しだけもにゃっと聞きにくい部分は1・2回あったけど「噛んだ」という程ではなかった。ほぼノーミスと言ってよいと思う。
ああ、他の人についても書きたいのだけど、私の記憶力と体力にも限界があるので、このあたりで勘弁してください(笑)あー甲本さんとか近藤さんとかも書きたいんですけどね。みんな、みんなステキでした。
楽しかったです。こんな時間を私にくれて、どうもありがとうございました。そしてここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
最近のコメント