他者のいない客席
3人の話をする。
☆1人目。
ケラさんの、ある舞台を見ての感想。
一番駄目だと感じたのが客席の状態だった。
ひいては、この状態を許容しているとしか思えぬ「舞台の責任者」も駄目なのかもしれない。
なぜ駄目かというと、「他者」がいないから。
他者不在状態は、他者(例えばケラさん自身)が見た時に大きな違和感を感じる。
何でもいいから関連商品は買う、みたいな客があまりに多すぎるとヤバイんじゃないか。
「味方」しかいない客席はつまらない。(もちろん「敵」しかいないのは最悪だが)
程良く、3割程度は「あまり好きじゃないなーコレ」と思ってる人や「なんだかよく分からないなぁ」と思ってる人が混じってる客席が好き。
そんなうまくブレンドできるわけないんだけど。
☆2人目。
西村雅彦さんがエッセイに書いていたこと。
自分の劇団が駄目になっていっていると感じて悩んだことについて。
人気が出て動員数が増えチケットが取りにくくなる。
観に行きたいなと思っている新しいお客さんはチケットが取れない一方で、
何度も足を運ぶ常連さんが常に最前列を取るようになり、メディアとして「閉じて」いく。
そして、何度も来ているお客さんはオチを知っているので、オチを言う前に笑い声が聞こえてくる。
芝居の内容の良しあしで笑うのではなく、極端な話、役者が舞台に出てきただけで笑いが起こるようになっていった。
西村さんは「頼むから見に来るのは一回だけにしてくれよー」と思い、
「なんか違うんじゃないか」という思いがどんどん大きくなっていったという。
☆3人目。
私の友人がある劇団の封印公演を観に行った時に話していたこと。
総決算のような内容で、今まで見に来てくれたお客さんに対して御礼のような舞台だったし、それを客側も分かっている感じだった。
でも自分は個人的には少しだけ違和感を感じた。
例えばそれは、一つ一つの役者のリアクションに対して熱狂的に笑うファンの人たちに対して。
戯曲の内容や、ギャグに対して反応しているのではなく、まるで機械的な反応を繰り返している一部のお客さん達を見て少しだけ悲しい気持ちがした。
この状況は、あまりに役者さんや、脚本家に対して申し訳ないんじゃないかと。
この劇団は、10年~20年の間に実は数回しか公演を行っていない。
その理由の中の一つは、そして彼らが封印しようと思った理由は、もしかすると私たちお客にもあるのかもしれない。
あまりに機械的な反応は、決して役者さんやスタッフ達を育てることはなく、いい影響を与えない気がする。
私はこの3人がみんな同じことを言っているように思います。
そして、これらの指摘はある程度当たってるのではないかと感じる。
かと言って、ごちゃごちゃ細かいところまで決められるのなんてまっぴらだ。
「笑いすぎちゃダメ」「笑わなすぎてもダメ」「関連グッズ買っちゃダメ」「二回以上来たらダメ」
そんなことを客に強制する権利は誰にもない。
それはお客さんの自由だから。
好きな芝居に、好きなだけ行って、自分の好きなように見ればいい。
ただ、熱心なお客さんが芝居を駄目にしてしまっているのだとしたら、それはなんとも皮肉である。
もちろん、たくさんのお客さんに来てほしいし、大きな反応を見せてくれるのは芝居を作る側からしたら嬉しいことだと思う。
でもこういう話を聞くたびに、あるいは自分が「味方だらけの客席」に余所者としてまじる時、
少しだけ胸がチリリと痛む。
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